

漆 と 蒔繪
世界最古の漆製品が縄文時代の「垣ノ島B遺跡」より発見されたことから、東アジア全域に広がる約1万年にも及ぶ漆文化は日本から始まったと考えられています。
古くは土器や副葬品に漆が塗付された痕跡があり、佛教の伝来とともに佛具の荘厳や天皇をはじめとする高貴な人々の調度類に用いられました。中世は公家や武家の文化を背景に花開き、近世近代に細密工藝の粋を極め今に至ります。
正倉院御物にも漆藝品が多く伝わっており、螺鈿・平文・蒟醤(きんま)など現代に続く技術の源流を垣間見ることが出来ます。
飛鳥時代の法隆寺「玉虫厨子」は伝世の漆藝品として日本最古のもので、三色の色漆を用いて漆絵の技術等で佛教説話が描かれています。
蒔絵は日本独自の漆藝の加飾技法で、筆に漆をつけ絵や模様を描いた上に金銀粉等を蒔き、漆で塗り固めて研ぎ出す技術です。
奈良時代には既に確立されていたようで、蒔絵の最古品である正倉院御物「金銀鈿荘唐大刀」は、鞘部分に研出し蒔絵で草花や鳥獣が描かれています。
時代背景と共に蒔絵の施される対象は変化しながら、その基本的な技術は数百年以上変わらぬまま受け継がれてきました。手近な品から建築装飾まで様々な変遷を辿り、先達による技法や素材の工夫が重ねられながら、今日まで蒔絵の技術が発展してきました。
阪田 瑤子 拝



